アカデミー賞作品賞ほか最多4部門受賞!
作品賞◆監督賞◆助演男優賞◆脚色賞
『ノーカントリー』(原題 NO COUNTRY FOR OLD MEN)
ハビエル・バルデム 緊急来日記者会見
司会: みなさまも楽しみにしていたと思いますハビエル・バルデムさん、スペインでも非常に人気の高い演技派俳優としてご存知の方も多いと思います。今年、遂にアカデミー助演男優賞を今年受賞されました。その映画『ノーカントリー』はアカデミー賞4部門獲得いたしまして、日本では2008年3月15日から公演となりました。
そしてハビエル・バルデムさん、遂に初来日しました。圧倒的存在感で観た人たちはみんな凄い!とおっしゃっていた"シガー"という役、本当に表情から身体から雰囲気から全て演じきっています。そんなハビエル・バルデムさん、本日はアカデミー助演男優賞を記念して来日してくださいました。
それでは早速お迎えします、本年度アカデミー助演男優賞を受賞しましたハビエル・バルデムさんです、盛大な拍手でお迎えください。どうぞ!!
司会: 私たちもとても楽しみにしておりました。ハビエル・バルデムさんから皆さまに一言ご挨拶をお願いできますでしょうか。
ハビエル(笑いながらカンニングペーパーを用意し、日本語で大変元気の良く挨拶する。以降、会見での応答はスペイン語ではなく、主に英語で)
こんにちは。私はハビエル・バルデムです。日本に来れて良かったです。ノーカントリー観てね!ありがとう。
司会: どうもありがとうございます。ハビエル・バルデムさん、アカデミー助演男優賞おめでとうございます。みなさん拍手でお願いします。非常にお疲れも残っていると思いますけれども、アカデミー賞授賞式に登壇されたときのお気持ちというのは、いまどう受け止めていらっしゃいますか?
ハビエル: 私はまだ疲れてませんよ…昨夜はちゃんと8時間眠りましたから(笑)日本に来ることが出来てとても光栄です。また沢山のみなさまにも集まっていただきまして本当にありがとうございます。
オスカーを受賞したときの話ですけれど、そのときは私はもうドキドキしていました。受賞者は皆様への感謝の言葉を述べるのですが、そのときにみんなの名前を言わないとなりません。でも40秒ほどしかなく、目の前の大きな時計がカウントダウンするのを見ながら話すので、非常に緊張してしまいました。
最後に母に向けてスペイン語で感謝の気持ちを述べたのですが、あのときはみなさんがその事を許可してくださって、本当に光栄でしたし誇りに思いました。
あれから1週間、2週間経ってジワジワと感激を噛み締めているところです。
司会: 本当におめでとうございます。いまお母様のお話がありましたがご家族の皆さんは受賞についてどんな感想をお話でしたか?
ハビエル: 実は今回の来日で私は12人らかの家族と親族をスペインから連れてくることが出来ました。それに対しては是非エージェントのエースに拍手をしてあげて欲しいですね(笑)
母は私のことをとても誇りに思ってくれました。そして私の家族は俳優一家としての長い歴史がありまして、まず祖父母が俳優でありましたし私に至るまで脈々と俳優の血が流れています。その中でようやっと認めてもらうことが出来るような賞を頂きました。ですから一族みんなに捧げたかったオスカー受賞式でした。 司会: はい、ありがとうございます。初めての来日となりまして、まだ昨日一日しか過ごされてませんが日本の印象は如何でしたでしょうか。
ハビエル: まだ十数時間しかいないのでよく分からないのですが、まず気が付いたのは日本の方々が非常に礼儀正しいこと、東京の街がとても清潔なことで、他の海外やマドリッドでも街がこんなに綺麗ではないんですね。
昨日の夜散歩に出て日本食を食べに行ったのですが、行く先で誰一人として英語をしゃべらなくて…仕方ないのでメニューを指差して注文したので、結局何を食べたか良く分からなかったんですが(笑)
でも、このように初めて来る所でしてみなさんもそうかと思いますが、40歳ともなるととても新鮮で1回目というのは色んな事に驚きます。この素晴らしい映画を日本にも応援しに来ることが出来て、そしてたくさんの人にお集まりいただけたことがとても嬉しいです。
司会: はい、ありがとうございました。それでは皆さんからの質問を承ります。
Q: 演じられたシガーの独特の髪型、何を考えているのか分からないような不気味さ、あのキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?また、シガーの正体といった物を念頭に置いて演じられたのか、それともまるっきり謎の男のまま演じたのでしょうか?
ハビエル: 先ず髪型のアイデアは、コーエン兄弟から出されました。打ち合わせでトミー・リー・ジョーンズが'80年代のメキシコ/アメリカ国境付近の写真を持ってきてくれたのですが、その中でこのおかっぱ頭の人々が写っていて、それを見たコーエン監督兄弟が「これが面白い、これで行こう」と言いました。私は全然面白いとは思わなかったのですが(笑)
しかしこの髪型というのがシガーの暗い部分を良く捉えていると思いました。
キャラクター作りについて私がベースとしたのは、先ずマッカーシーの原作(コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』)です。このキャラクターは、まるで自然の力に導かれるかのように暴力を振るい、体現している者なんだと考えました。というのも彼を単なるサイコパス(Psychopath/精神病質)として扱っては非常に陳腐な物になってしまいそうですし、今回の映画の中に流れる死と運命と暴力というテーマを体現するのがシガーという男の役柄だと思うのです。
Q: シガーは冷徹な殺し屋で、もう何度も人を殺すシーンを演じています。大変だった事は何ですか?また今まで俳優として映画に携わってきた中で大切にしている物は何ですか?
ハビエル: 実際に人を殺しているわけではないので特に難しさというのはないのですが、そもそも暴力というのが私は好みませんから普段振るったり映画の中でも暴力シーンも好きではないです。しかし原作を読めばその暴力のレベルがまるで違うことが分かりますから、なんとかそれに沿うように演じたわけです。
特に、人は誰しもが内なる暴力を抱えながらそれを抑えているからこそ、その内なる暴力の大きさを表現することも出来るのだと思って演じました。
モーテルで立て続けに3人殺すシーンですけれども、私は"ああ怖い"と思って出来ることならやらずに済ませたいと思いました。小道具の人から銃を渡されたときももう怖くて触れないと言ったら、ホントにこの役を演じられるの?と冷やかされたりしました。それにあの銃声もイヤですね、バンバンという音も怖いんです。ですから私が良くこんな役をやれたなと自分でも感心してしまいます。
演じるということは自分にとってとても必要なことなんです。物事を色んな視点から見ることが出来ます。映画の登場人物を通して見える異なる視点異なるレベルの視点を表すことが出来るのが重要です。そんな風に私に仕事があるというのはとても幸運です。
本音で言うなら先ず仕事があるという中で、ビジネス観点でキャリアを積み有名になるということでなく、俳優という者は毎日毎日の中で戦っていきます。自分がもっと良くなっていきたいその思いと共に励んでいます。それが俳優にとって大事だと思います。
司会Q: シガーは自分でも良くやり遂げたなと思うほどの暴力的シーンの役柄でしたが、それにも関わらず引き受けた一番の決め手は何ですか?それと出演映画を選ぶにあたり大変重要なこととしている点は何ですか?
ハビエル: 私が20歳の頃コーエン監督の1作目ブラッドシンプル(Blood Simple 1984年)を観て、大変衝撃を受けました。それからというもの、いつかは一緒に仕事がしたいと夢見ていました。でも、私はスペインに居るわけでアメリカに居る彼等と仕事をするなんて無理だろうなと思っていました。ですからその可能性が見えたときにとても光栄でしたし奇跡に近いと思いました。
脚本を読んでみたら自分の好きではない暴力シーンがいっぱいあったのですが、原作の中のキャラクターには暴力に対する哲学的な広がりがあると分かったので、後は監督を信じて返事をしました。
Q: コーエン監督とは各受賞の喜びをどのように称えあいましたか?また、テキサスやニューメキシコという過酷さのあるロケ地での撮影の苦労などありましたらお聞かせください。
ハビエル: コーエン兄弟が受賞のときかけてくれた言葉というのは"おめでとう"という言葉でした。
彼らはとにかく謙虚で天才肌ですから何でもないことのような様子でした。オスカーの受賞はとても嬉しかったはずですが彼らはそれを表に出すようなことはしていませんでしたよ。
私は特に作品賞を受賞したことが嬉しく思います。この映画はその作品賞に値する映画ですからこれは本当に嬉しかったです。
大変だったことといえば先ずあの髪型で毎日過ごさなければならなかったことです。メキシコでのオフのときにちょっと何か買いに出るにしても、みんながコイツは何者だ?という目でこちらを見るわけです(笑)
撮影に関しては何の問題もありませんでした。コーエン監督というのは撮影に入る前から準備が整っていて、どのように撮ってどうなるのかが明確ですから、撮影は喜びでいっぱいで臨んでいました。緊張したりピリピリした空気は全然無いですし、誰かが疑問を抱えているということもありませんでした。
司会Q: 先ほど作品賞に値する映画だという言葉がありました。ハビエルさんから見てそれはどんな所でしたでしょうか?
ハビエル: それは多くの人に何かを与えることの出来る芸術性があるということ。作品の中でさまざまな人の感情、表現がなされている…それが作品に広がっていること。それが良い作品であることになっていきます。
この映画は人の手によって作られていますが、人の手で変にいじくられ操作されていない作品であること、クリーンな出来であること…これはコーエン監督だけが成せるスタイルですしこの点が作品賞に値するものです。
音楽にしてもその音符一つ一つに至るまで、俳優のアクション/リアクション、台詞のやり取りひとつひとつが綿密に作られています。その出来を監督たちがどうしろこうしろといじるのではなく、現場の雰囲気からしてそういうふうに自然と持って行った上で撮影しカメラに収めることが出来るというのが、彼等ならではの裁量だと思います。
司会: あいどうもありがとうございました。
(以降フォトセッションへ)
登壇者(敬称略) ハビエル・バルデム、司会進行 映画パーソナリティ 伊藤さとり、通訳 比嘉世津子(スペイン語/英語)
2008/3/11都心ホテルイベントホールにて。
T,Tomonaga.
コーエン兄弟
Q: コーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』を映画化しようと思ったのはなぜですか? ジョエル 「マッカーシーのほかの小説にも、好きなものはあったんだ。とりわけ『血と暴力の国』が僕たちにとって映画にしやすい小説だと思ったし、映画として最も興味深いものになりうると思った。脚本にするのもそんなに難しくなかったよ。小説のなかに潜んでいるユーモアと僕らが持つユーモアにどんな共通点があるかどうか、実は自分たちにはよくわからないけれど、自然と似ている部分を感じたのかもしれないね。マッカーシーは撮影中に何度か会いに来てくれたし、完成した映画も気に入ってくれたと思う」
Q: 『ノーカントリー』はこれまでの監督作とくらべて、最も暴力的な作品ですね。とはいえ、シュガーがあまりにも恐すぎて、笑ってしまう場面もありました。
ジョエル 「空気銃を片手に歩き回っているシュガーは、どこかコミカルであると同時に恐ろしい。マッカーシーはとてもダークな小説家だと見なされているけれど、確実にユーモアのセンスがあるし、僕らはその部分に強く反応したんだ。ものすごく恐ろしいことのなかに、面白いことが潜んでいるものなんだ」
Q: シュガーは快楽のためでも誰かのためでもなく、顔色ひとつ変えずに人殺しをしていく。とても不条理で、エイリアンのような存在に思えました。
イーサン 「そうだね。唯一、彼だけがあの土地出身のキャラクターじゃない。彼のキャラクターは、小説のなかでも映画のなかでも、定義できない、はっきりしないアウトサイダーだ。彼はコイン・トスをして、ほとんど気ままに意味もなく人を殺す」
ジョエル 「映画の最初で、シュガーがどこからともなく現れるところがあるけれど、どこから来たかわからない。単に現れるだけ、ほとんど『地球に落ちてきた男』みたいな感じでね。そういう意味でも、シュガーはエイリアンみたいだよね」
イーサン 「モーテルのドアの後ろにシュガーがいるはずの場面では、僕らは小説よりもそういう部分を強調している。シュガーがゴーストか何かだと思わせるくらいにね」
Q: ハビエル・バルデムとトミー・リー・ジョーンズを起用した理由を教えて下さい。
ジョエル 「ハビエルはアルモドバルの映画に出ていた頃から好きだったし、『夜になるまえに』『海を飛ぶ夢』もアメリカで公開されたものはすべて見ているから、ずっと彼と一緒に仕事をしてみたかったんだ。普段、僕らはスペイン語を話す外国人の役者をキャスティングしない。なぜなら僕らはそういうキャラクターを書かないからね。だから今回は、ハビエルをキャスティングできる、稀な機会だったんだ。実際に一緒に仕事をして、彼の演技の何もかもに驚かされたよ」
イーサン 「トミー・リーは、僕たちが最初に出演を依頼した人なんだ。テキサス出身であの威信を持っている俳優は誰か。そう考えると、彼しかしないよね」
トミー・リー・ジョーンズ
Q: これまでのコーエン兄弟監督作に、どんな印象を持っていましたか? 「彼らの作品は全部見ていて、どれも好きだよ。特に『ファーゴ』と、この『ノーカントリー』は一番のお気に入りだ。『ファーゴ』は見事に撮影されていてまったく予想がつかないし、フランシス・マクドーマンドが大好きだしね。『ノーカントリー』も、とてもオリジナリティーあふれる映画になっていて、最後まで楽しんで見たよ」
Q: あなたが演じた保安官のベルは、昔気質なテキサスの男ですね。
「"悪の顔"はあっと言う間に変わるけれど、"善の顔"は変わらない。ベルが直面しているのは、そういう問題なんだ。彼はドラッグが国境を超えてくることや、自分が稼いだわけでもないお金のために殺し合いをする人々に慣れることができない。ベルはそんな相手を打ち負かせると感じている男なんだよ」
Q: 『NO COUNTRY FOR OLD MEN』(原題)というタイトルが持つ意味について、どのように考えていますか?
「"カントリー=テキサス"についてならよく知っているんだ。生まれた場所だし、幸せに暮らす何人かのオールドマンも知っている。私もあと15分ほどしたら、そうなることが予想されるしね(笑)。でもこの映画のなかのカントリーは地理的なものではなく、寓話的、比喩的に使われているものだと思うね」
ハビエル・バルデム
Q: コーエン兄弟と仕事をして彼らのどこが特別だと感じましたか? 「彼らはいともたやすくシーンを作り上げているように見えるけど、実際の彼らの努力やその製作過程は誰にもわからないんだ。ただ、どんな困難な状況でもすぐにそれを解決して
会話に基づいたシーンを作り出す。そのあまりの速さにぼくはショックをうけたよ」
Q: 独特の外見とスタイルは役作りの助けになりましたか?
「ヘア係のポールがすばらしくてね。ポールがパッとやって突然あの髪型が生まれたんだ。コーエン兄弟もその場にいたんだけど、大笑いされたよ。でも、ぼくは出来上がった髪型を鏡で見て『これでキャラクターの50%ができた』ってつぶやいたけど(笑)」
Q: 映画は多くの意味で荒涼として見えますが、その世界観をどう表現されますか?
「これは暴力的な映画だ。でもそこに込められたメッセージというのは、ぼくが体現する暴力には意味がないということなんだ。この映画ではぼく自身が暴力で、誰もぼくを完全に理解できない。つまり、暴力に理由などなくて、なにも解決しないか破壊し尽くしてしまうかなんだ。だったらもっと激しい暴力で止めるしかないと考える人もいるかもしれないけど、それは
さらなる痛みと苦しみを生み出す。ぼくが好きなメッセージのある映画だと思うよ」
ジョシュ・ブローリン
Q: ルウェリン役は自分にぴったりだと思っていましたか? 「少なくとも監督たちの目にはそう映ったんだろうね。ぼくは今作の舞台となったあの辺りで65頭の馬と一緒に牧場で育って、農業もやっていたから」
Q: ルウェリンはなぜ、直面している敵が自分には到底叶わない巨大な力を持っていることを理解しないのでしょうか?
「最初はハビエルが演じるキャラクターのような、ものすごく危険な人間に直面するとは思っていなかったのさ。ルウェリンは選択肢と妻への愛を示すチャンスを与えられて、昔ながらの方法でそれを叶えたかっただけなんだ。このチャンスがなければ、決してふたりが持てないようなものを彼女にあげたかった。彼の選択がぼくにはよくわかるよ。そこにあの死神が現われてしまったんだ」
Q: 今作はコーエン兄弟にしてはキャラクターの言葉数が少ないですが、俳優にとってそれはやりやすいのでしょうか? それともやりにくい?
「正直、ぼくはあまり気にしなかった。でも、なんの説明もせずに身体や眼差しだけで言葉があるときと同じ量の情報を伝えなくちゃいけないから、ずっと難しいとは思ったけどね。その点コーエン兄弟はぼくを信じてくれていたからとてもやりやすかった。他の監督とだったら消耗していたかもしれないよ」
――TEXT オフィシャルより
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