イブラヒムおじさんとコーランの花たち (MONSIEUR IBRAHIM ET LES FLEURS DU CORAN )

■監督 フランソワ・デュペイロン

■出演 オマー・シャリフ/ピエール・ブーランジェ/ジルベール・メルキ/イザベル・アジャーニ

イントロダクション

「笑ってごらん・・・幸せになれるから」
笑顔を知らないユダヤ人の少年に人生の素晴らしさを教えたのは、年老いたトルコ商人だった。
『ニュー・シネマ・パラダイス』、『セントラル・ステーション』に続き、世界各国を温かな涙で包み込んだ感動作が日本上陸!

パリの裏町で暮らす13歳のユダヤ人少年モモと、彼のアパルトマンの向かいで小さな食料品店を営むトルコ移民の老人イブラヒム。家族の愛に恵まれない不幸な境遇の中で思春期を迎え、大人への階段を一歩ずつ上っていくモモ。そんな彼の成長に手を貸すことに生き甲斐を見出し、孤独な生活から脱していくイブラヒム。愛も知らずに人生の春を迎えた少年が、人生の晩秋にさしかかった老人と出逢い、限りない愛情を注がれ、人生の楽しみ・喜びを知っていく姿をいきいきと捉えた物語は、人種と世代の壁を超えた人間同士の絆を描く普遍的なヒューマンドラマとして、深く心にしみる味わいを残す。

本作は、エリック=エマニュエル・シュミットがコーランと実在した祖父の思い出を元に描いたベストセラーの映画化だ。2003年のヴェネチア映画祭で主演のオマー・シャリフが特別功労賞を受賞したほか、本年度のゴールデン・グローブ賞の外国語映画賞にノミネートされるなど、世界各国で絶賛の嵐を巻き起こしている珠玉の感動作だ。

イブラヒム役を即決。名優オマー・シャリフの演技が輝く

賢明でつつましく、無限に広がる空のようにおおらかな人生観を持つイブラヒムを演じるのは、『アラビアのロレンス』(‘62)でアカデミー賞候補になって以来40年以上も国際派スターとして活躍するも一時引退を宣言していたオマー・シャリフ。本作をきっかけにハリウッドからもオファーが殺到。『オーシャン・オブ・ファイヤー』(‘04)などで得難いバイプレイヤーぶりを発揮している。哲学的なセリフをさらりと言ってのける役柄に枯れた名演技を光らせた彼は、本作でヴェネチア映画祭の特別功労賞、観客賞を受賞したほか、セザール賞の主演男優賞も受賞。ゴールデン・サテライト賞の助演男優賞にもノミネートされた。

その名優シャリフと共に劇の感動を担うモモを演じたのは、本作がデビューとなるピエール・ブーランジェ。全くの新人ながら、思春期の揺れ動く感情を巧みに表現する演技は批評家の賞賛を浴び、シカゴ国際映画祭では主演男優賞に輝いた。その他、脇を固めるキャストには、『逢いたくて』のジルベール・メルキ、『ヴィドック』のイザベル・ルノーといったベテランが集結。また、イブラヒムの店へ水を買いに来るブリジッド・バルドーのような女優の役どころで、イザベル・アジャーニが出演しているのも見逃せない。

60年代のノスタルジックな音楽がしみじみと心に残る

 

キャスト

オマー・シャリフ (イブラヒムおじさん)
1932年4月10日、エジプトのアレクサンドリア生まれ。イギリスに演劇留学したのち、1955年にエジプトで映画デビュー。中東圏の大スターとなり、フランス映画にも出演。そのなかの1本、『Goha』('58)がカンヌ映画祭の審査員賞を受賞したことから国際的に注目され、デヴィッド・リーン監督の超大作『アラビアのロレンス』('62)のペドウィン族の族長役に抜擢された。その堂々たる演技が話題を呼び、アカデミー助演男優賞にノミネート。以降、『ドクトル・ジバゴ』('65)『将軍たちの夜』('66)『ファニー・ガール』('68)『うたかたの恋』('69)といった英米仏の話題作に出演。一時引退を表明していたが、ヴェネチア映画祭の特別功労賞を受賞した本作をきっかけに、第一線に復帰。ヴィゴ・モーテンセン共演の『オーシャン・オブ・ファイヤー』('04)で、ハリウッドにもカムバックを果たした。その他の出演作に、『黄色いロールス・ロイス』('64)『マッケンナの黄金』('69)『ゲバラ!』('69)『華麗なる大泥棒』('71)『夕映え』('74)『ジャガーノート』('74)『ファニー・レディ』('75)『華麗なる相続人』('79)『13ウォーリアーズ』('99)などがある。

ピエール・ブーランジェ (モモ)
1987年8月8日生まれ。約250人の候補者からモモ役に選ばれ、本作で映画デビューを飾った。監督のフランソワ・デュペイロンは、当初、別の少年でテスト撮影を試みたのち、キャスティングを再考。3回のオーディション、監督の面接、オマー・シャリフとのテスト撮影を経て、モモ役に抜擢された。結果、シカゴ国際映画祭の主演男優賞に選ばれるなど、世界的に高い評価を得たブーランジェは、本作のあと、テレフィーチャーの「AN OLD FRIEND」('03)に出演。ベルギーの短編『LE GRAND VENT』('04)を経て、コスタ・ガブラス監督作へのオファーを受けている。スキー、ハンド・ボール、水泳が得意。

ジルベール・メルキ (モモの父)
ほこりだらけの書斎にうずもれ、絶望的な人生を送るモモの父を演じる。おもな出演作に、『奥サマは魔女』('97)『アイスリンク』('98)『アンルーリー 〜復讐の街〜』('98)『エステサロン/ヴィーナス・ビューティ』('99)『逢いたくて』('02)などがある。

イザベル・アジャーニ (映画スター)
1955年6月27日、フランスのパリ生まれ。14歳から女優の道を歩み、『Le Petit bougnat』('69)で映画デビュー。コメディ・フランセーズの舞台で活躍するかたわら、フランソワ・トリュフォー監督の『アデルの恋の物語』('75)に主演。アカデミー賞にノミネートされたほか、ナショナル・ボード・オブ・レビュー、ニューヨーク映画批評家協会賞、全米映画批評家協会賞の主演女優賞を受賞し、国際的な注目を集めた。その後、フランスを代表する女優として『ザ・ドライバー』('78)『イシュタール』('87)などのハリウッド映画でも活躍。88年の『カミーユ・クローデル』で再びオスカー候補になった。その他の代表作に、『ポゼッション』('80)『カルテット』('81)『殺意の夏』('83)『サブウェイ』('84)『王妃マルゴ』('94)『悪魔のような女』('96)などがある。

 

スタッフ

フランソワ・デュペイロン (監督・脚本)
1950年生まれ。78年から88年までのあいだに10数本の短編を撮り、『La Nuit du hibou』('84)でセザール賞の短編ドキュメンタリー賞、『Lamento』('88)でセザール賞の短編映画賞を受賞。カトリーヌ・ドヌーブ&ジェラール・ドパルデュー共演の『夜のめぐり逢い』('88)で長編デビューを飾り、セザール賞の有望作品賞と脚本賞にノミネートされた。その後、再びドパルデューを主演に『ザ・マシーン/私の中の殺人者』('94)を監督。99年には、牧畜農家の青年の幸せ探しの過程をたどる『うつくしい人生』('99)を発表し、サンセバスチャン映画祭のグランプリを受賞した。また、戦時下のフランスを舞台に、人間の心の回復というテーマと取り組んだ『将校たちの部屋』('01)は、カンヌ映画祭で高い評価を受け、セザール賞の作品・監督・脚色部門にノミネートされた。

エリック=エマニュエル・シュミット(原作・脚本)
1960年、フランスのリオン生まれ。哲学博士の称号を取得したのち、91年に初の戯曲「la nuit de Valognes」を発表。93年には「le Visiteur」でモリエール賞の作品賞、戯曲家賞、新人賞を受賞し、劇作家としての地位を確立した。その後、「la secte des 使o不tes」で小説に進出し、処女小説賞を受賞。2作目の「小説 イエスの復活」(NHK出版刊)では、ELLE読者大賞を受賞した。本作の原作は、仏教を扱った第1部「ミラレパ」(PHP研究所刊予定)、キリスト教を題材にした第3部「神様とお話しした12通の手紙」(PHP研究所刊)と共に、宗教・信仰・文化をテーマにした「目に見えないものの3部作」の形体をなしている。本作はその第2部にあたる。


ストーリー

「ほら、人生は素晴らしい」
あの夏、ぼくは幸せになる秘密を知った。


1960年代初頭のパリ。モモ(ピエール・ブーランジェ)は、ブルー通りのアパルトマンで父(ジルベール・メルキ)と暮らす13歳のユダヤ人の少年。母は、モモが生まれてすぐ兄のポポルを連れて家を出て以来、まったくの音信不通。その寂しさもさることながら、優等生だったというポポルと比べられ、父から小言を言われることが、モモにはうっとうしくて仕方がない。

そんなモモの目下の最大の関心事は、はやく初体験をすませること。毎日、アパルトマンの窓から娼婦たちの姿を眺めながら、誘い方の練習に励むモモ。「今日こそは」と意を決した彼は、貯金箱の小銭を持って、通りの向こうにあるトルコ移民の老人の食料品店へ両替に行った。店主のイブラヒム(オマー・シャリフ)には、両替の目的はお見通し。だが彼は、黙ってモモに札を手渡した。その35フランを握りしめ、通りに戻ったモモは、16歳だと年齢をごまかして娼婦を誘うことに成功。晴れてオトナの仲間入りを果たす。

それからしばらくして、ブルー通りに映画の撮影隊がやって来た。近所の人たちや娼婦に交じって、モモも撮影を見学。イブラヒムの店では、女優(イザベル・アジャーニ)が買い物をした。イブラヒムが水を5フランで売りさばくのを見て、「ぼったくりだね」と声をかけるモモ。するとイブラヒムは、「君がくすねた分を取り返さなくちゃ」と言った。彼は、モモが毎日のおつかいのついでに、缶詰を万引きしているのを知っていたのだ。「ちゃんと弁償するから」と、しどろもどろになるモモに、「弁償しなくていい。でも、盗みを続けるならうちの店でやってくれ」と答えるイブラヒム。モモ宅の家計の苦しさを知っている彼は、余ったパンをあぶって食べる方法や、コーヒーにチコリを混ぜる方法、ティーバッグを乾かして再利用する方法をモモに教えてやった。そんなイブラヒムに、モモは、父親からは得られない大きな愛情を、彼が注いでくれるのを感じる。

モモがイブラヒムに教えてもらったこと。そのなかで最も役に立ったのは、笑顔で幸せをつかむ方法だった。数学の授業で問題が解けなくて困ったとき、いくら誘っても相手にしてくれなかった娼婦を口説くとき、笑顔はとても役に立った。だが、父にこの手は通用せず、笑顔を向けても「歯列矯正が必要だ」と言うばかり。ガッカリしたモモは、「僕がポポルならパパに愛されたのに。ポポルはママに笑い方を教わったはずだ」と、イブラヒムに寂しい胸中を打ち明ける。そんなモモを、「ポポルよりも100倍、君のことが好きだ」と言ってなぐさめたイブラヒムは、「足は取り替えることができないから」と、モモに靴を買ってくれた。

そんなある日、失業したモモの父親が、わずかな持ち金と置き手紙を残し、家を出て行く事件が起こる。父に捨てられた悲しさと、束縛から解き放たれたうれしさが入り交じった複雑な思いにかられるモモ。彼は、同じアパルトマンに住むミリアム(ローラ・ナイマルク)という少女と交際を始めるが、まもなく彼女の気持ちは別の少年に移っていった。生まれて初めての失恋を体験したモモに、イブラヒムは、「彼女への愛は、永遠に君のものだ」と優しく言葉をかける。

まもなく、モモの家に悲しい知らせを持って警官がやって来た。父が、マルセイユ郊外で鉄道自殺をはかったというのだ。なすすべもなく、モモはイブラヒムの店に駆け込む。事情を聞いたイブラヒムは、遺体の確認という辛い仕事を、モモに代わって引き受けてくれた。

数日後、ひとりの女性がモモの家を訪ねてくる。彼女は、モモが生まれてから一度も顔を見たことのない母親(イザベル・ルノー)だった。「迎えに来た」と言う母に、「自分は留守番のモハメッドだ」と答えるモモ。そのとき初めて、彼は、自分が母の不倫によって生まれた子供であること、そして、ポポルという兄などいないことを知る。

母が去っていったあと、イブラヒムの店を訪ねたモモは、「僕を養子にして」とイブラヒムに頼んだ。この申し出に、イブラヒムは大喜び。そんなふたりの前には、人種と血縁の壁が立ちはだかったが、それをなんとか乗り越えて、モモはイブラヒムの息子になった。

しばらくして、赤いスポーツカーと運転免許を手に入れたイブラヒムは、モモを連れて故郷のトルコへ帰ろうと決意する。フランスからスイス、アルバニア、ギリシャをめぐる旅を通じて、本物の親子のように心を通わせていくイブラヒムとモモ。モモを自慢の息子だと人々に紹介するイブラヒムは、「幸せだよ、モモがいてコーランの教えがある」と言いながら、特上の笑みを浮かべた。やがてトルコに到着したふたりは、イブラヒムの故郷の村をめざすが……。

原作者のエリック=エマニュエル・シュミットと共同で脚色を手がけ、青春映画情感を醸し出す演出に巧みな腕を発揮した監督は、長編デビュー作『夜のめぐり逢い』でセザール賞2部門の候補になり、『うつくしい人生』でサンセバスチャン映画祭のグランプリを受賞したフランソワ・デュペイロン。撮影には、『将軍たちの部屋』でデュペイロンと組んだレミー・シェブリンがあたり、主人公たちの心象風景と呼応するぬくもりのある映像を作り上げている。フランス中のティーン達がラジオから流れるアメリカのロックンロールやフレンチ・ポップスに夢中になり、マディソン・ダンスが大流行した時代の雰囲気を醸し出す音楽は、監督自身が担当。ビル・ヘイリー&ザ・コメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」、ヴィンス・テイラー&ザ・プレイボーイズの「スウィート・リトル・シックスティーン」をはじめ、ティミー・トーマス、マーキーズ、クロード・ヴェガ、ジョニー・アリディ、クリス・モンテス、フランク・アラモらのナンバーが、人生と恋の葛藤をくぐりぬけて成長していくモモの心理描写に応えた使われ方をしており、時にテンポよく、時にしみじみと心に残る。


『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』
11月20日(土)より、恵比寿ガーデンシネマほか全国順次ロードショー

提供・配給:ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ


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2004年11月〜12月公開映画情報

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