娘の失踪の真相をつきとめ、わが子を取り戻すために拉致被害者家族の長い戦いの日々を追った衝撃と感動のドキュメンタリー。現代社会における最大の悲劇ともいえる事件に衝撃を受け、アカデミー賞受賞監督ジェーン・カンピオン
(『ピアノ・レッスン』)が製作総指揮を快諾。監督はジャーナリストのクリス・シェリダン、パティ・キム夫妻。いまだ解決されていない事件の裏にある家族の愛の物語に世界中の映画バイヤーが殺到した。本作は8月18日よりロサンゼルスでの限定公開を皮切りに、全米で順次公開されていく他、来年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門へのノミネーションを目指して活動を続けている。
テレビニュースでは語りつくせない真実が観た者の心を奮わせる・・・。
2006年10月5日「めぐみ-引き裂かれた家族の30年」の共同製作監督であるクリス・シェリダンさんパティ・キムさん夫妻が来日。拉致被害者の一人、横田めぐみさんの42歳の誕生日のこの日に、ご両親の横田早紀江さんと滋さんも交えて公式試写会が都内で開かれた。
いまだ悲しい出来事の真っ只中にある横田夫妻のこの映画にかける思いと、ある驚きと共に製作を思い立ったという両監督の意識を会見を通して伝える。
国内において非常に関心の高まっている問題だけに、試写会場に訪れた人々マスコミの数は計り知れず、生憎の雨の中であっても会場はもの凄い人の数で溢れ返っていた。
めぐみさんの失踪事件を描いた映画への我々日本人の反応をリアルタイムに記録する為に、監督夫妻は試写会場にビデオを持ち込み自らの手で観客へのインタビューを取っていた。これも報道とドキュメンタリーの世界に生きる者がゆえか。
この会見の後、北朝鮮は核爆発実験を強行し世界からの孤立を進めてしまっているのが何とも残念でならない。しかし、大混雑していたと言ってよい状況の中でもこうした大胆で油断の無い行動力を発揮出来るならば、少しずつ問題も解決していけるのではないか…と思えてくる程、この2人には力強いものを感じた。
司会 : 本日は横田めぐみさんの42回目のお誕生日ということで、10月5日先ほど一般の方にも試写会と言う形で観て頂きました。いろんな方々からコメントも届いています。
登壇者のみなさまをご紹介させていただきますので盛大な拍手でお迎えください。
先ずはクリス・シェリダン監督です、どうぞ。そしてパティ・キム監督です。続きまして横田早紀江さんです。横田滋さんです…
では早速みなさんからご挨拶いただきたいと思います。
クリス・シェリダン監督 : こんにちは。本日はみなさんにおこし頂きありがとうございます。またこのように作品を取り上げて頂き大変嬉しく思っています。
既に試写した方もいると思いますがその方たちには私たちはこの映画を政治的物語というよりも、あくまでヒューマンな物語、人間的な物語として捉えたかったのだ…と、きっと判って頂けたと思います。
今回の映画を手がける以前に、殊に拉致問題について我々は何の知識もありませんでした。
私たちはこの問題を、2002年に小泉元首相が初めて訪朝したのをきっかけに知りました。
私たちは日本と北朝鮮の両国間の歴史的背景を学ぶこともありませんでしたし、また政治的な関わりの意味合いも知らないまま育ちました。
しかしその事柄を初めて知ったときは正に衝撃的でした。
余りに悲しい出来事が起こり、その中で何としてでも自らの家族を取り戻そうと奮闘する人々の姿そのものに一番心打たれたのです。映画は政治的見地以前にそうした家族の視点で描くことになりました。
司会 : ありがとうございました。続きましてパティ・キム監督お願いします。
パティ・キム監督 : 本日お集まり頂きありがとうございます。こうして日本に参りましたことをこの上なく光栄に感じております。まためぐさんのお父様お母様と、ここでこうしてまたご一緒出来る事が更なる光栄です。ありがとうございました。
司会 : ありがとうございました。続きまして横田早紀江さん宜しくお願いします。
横田早紀江さん : みなさまこんにちは。こうして沢山のカメラマン、メディアの方々に囲まれまして、長い間こうして何度私達の事を撮って頂いたかなぁ…と今思いながら拝見させて頂いています。
この度はパティさん、クリスさんご夫妻によって本当に素晴らしい生のままの映画を、一人一人の人間そのままの映画を撮っていただきました。あらゆる角度のあらゆる職業のあらゆる人たちの姿をそのままに撮って頂きました。
人にとって何が大切か?と言うことを表すために一生懸命に映画を撮って頂いたことに本当に心から感謝しております。
そもそもはアメリカの方たちにも多くのことを知らせて頂くために作り切って下さったのですが、今回こうして日本のみなさまにもハッキリと拉致の問題を判って頂きそして、何が大切なことか隠されているのをハッキリと現してくださった映画を創られた事に感謝しております。
司会 : ありがとうございました。続きまして横田滋さん宜しくお願いします。
横田滋さん : 4年前この映画の撮影の打診がありました。
アメリカの一般の方たちはまだ拉致の問題にあまり関心が無いようなので、そうした人たちに理解してもらうために映画を創りたいと伺いました。
これまでに3度来日され、1回の期間でもかなり長期間滞在して新潟にいたり色んな所に行って撮影をしました。目的がそのような事ですから日本での公開が行われると言うふうには思ってもおりませんでした。
しかしこの映画が完成してスラムダンス映画祭などで賞を受賞したと言うことが日本にも伝わますと、奪回支援の関係者などからもどうすればこれを日本でも見てもらうことが出来るだろうか…という事も話題になっていました。
しかし配給会社が決まらなければそれも無理なことなのです。しかし数々の映画賞を取って行くうちに、今日本でも多くの配給会社さまが名乗りを上げて下さるようになり、その中でGAGAさんが配給の権利を獲得して下さいました。
その後一度意見公聴の試写会を持ちましたが、ようやく今回が公式の試写会になりました。ですから本日大勢の方におこし頂き大変嬉しく思っております。更にこの映画のことが報道されて多くの人の知るところとなり、そして来月の一般公開の時には沢山の人に見て頂きたいと思っています。
司会 : はいどうもありがとうございました。監督の代表として、クリス・シェリダンさんに伺います。
一連の問題を知り、映画製作を思い立ったとの事ですが、具体的にどんなところに心を揺さぶられたのですか?
クリス・シェリダン監督 : まずこの物語は前代未聞の想像を絶する物語です。
銀行員の父とその主婦という普通の夫婦一家に1977年突如人生を覆すような事件が起きます。しかしこの時点では政治的背景も知る由も無いままの、個人的一家に起きた悲劇に過ぎなかったと言う、本当に特異な状況でありました。
もしこの物語をハリウッドに持っていけば、十分に成り立つほどの価値ある物語です。しかし当然これはフィクション等ではなく総て起きたことは事実でした。
このハリウッド的物語の資質に私たちは驚かされたのであり、事実は小説より奇なりと言われる通りのこの驚きを映画にしたいと思いました。
司会 : 監督から、あなたたちの人生を映画化したいんだと言われたとき、どんなことを感じそしてなぜ承諾することにしたのですか?
横田滋さん : 国内の世論を高めるために私たちは講演を進めていますが、海外での拉致問題認識を更に浸透させるためにこの映画を創ると聞いたときには、出来るだけの協力をしたいと思いました。またそれだけの価値のあることだと思いました。
監督はドキュメンタリー監督として確立した方だけあって、非常に力強いものを持っています。しかし強いだけでなく細やかな心遣いも出来て全幅の信頼を寄せることが出来る存在だと感じています。
製作に先立ち聞いたりしましたが、ドキュメンタリーというとどうしても多くの情報を詰め込みたくなる余り、長くなったり焦点がボケたりしがちとの事でした。ですから、その事を留意しながら今回の映画を創ったといいます。
拉致問題を知るためには、この映画を観れば分かると言える程の立派なものが出来上がりました。我々にとっても、完成度の高い満点と言える映画だと思っています。
マスコミによる質疑応答(以下掲載は映画製作への質疑を中心に割愛)
Q :
めぐみさんの失踪前後に関わらずめぐみさんの誕生日をご両親は大切にしていると思いますが、この日に試写会を持てた事についてあらためて考えをお話ください。
横田早紀江さん : きょう10月5日はめぐみの誕生日です。13歳で連れ去られてから毎年毎年こうして苦しめられてきましたが、もう42歳になってしまいました。30年近い年月、北朝鮮に拘束されたままでまだめぐみの姿は…(見えず)生死も分からず闇の中に隠されています。
本当に良くこんなに頑張ってこられるな…と、自分自身に良くやってるね…と眠る前に自分に言ってあげたいくらい一所懸命戦ってきました。
沢山の方の沢山の暖かいご支援の中で、またマスコミ方達にも心有る報道の中で守られてきました。
きょうようやく安倍さんが立たれ、新たな良い組閣がなされたと思っています。
こうした中で拉致問題が次の転換期を迎えていて、良い方向に向かうのではないかと期待をしています。
きょうの日はいつもならばケーキを買って何か料理を作って…と、今まではそうした誕生日を迎えていましたが、やはり私たちは本当に普通の生活ではないんですね…
本当に不自然な生活をしていて普通で単純な思いの誕生日を迎えたいな…と、そんなふうに思っている暇さえも無いほどに厳しい生活を強いられます。
けれどもきょうこうして拉致を取り上げた素晴らしい映画を、監督ご夫妻がお創りになってその事が日本で報道され、そして観て頂ける事になったのがどんな大きなケーキよりもどんなお祝いの言葉よりも大きな誕生日のお祝いだと、心から有り難い気持ちで感謝いたします。
こんなことが起きているのかと言うことを多くの人たちに知って頂き、拉致された方々全員がみんな無事で帰ってくることを、その為にご協力頂きたいとお願いいたします。
横田滋さん : めぐみの誕生日の日の過ごし方は、家に居たときはみんなが集まり賑やかに過ごしていましたが居なくなってからは弟2人が居りましたから、家族でささやかながら誕生祝をしていました。その子供たちが家を巣立ってからは誕生祝という事もしませんでした。
が、平成9年になって、めぐみが平壌に居るらしいとの報道があった年には大きなケーキを買いました。そして沢山の方が取材にもみえましたから、そうした方々と一緒になってケーキを食べお祝いました。
しかし、やはり北朝鮮ではこうした甘い(美味しい)ものは食べられないだろうな…と、思って翌年からは小さなケーキにしてしまいました。
めぐみが小学校を卒業するときの当時の校長先生や新潟の「救う会」、新潟の方たちが訪ねて来て下さってめぐみの写真の前で集まりケーキを食べて祝ったりもしました。
今年はこの映画の試写会もありましたし、その校長先生や弟たちの担任の先生までも上京下さいまして、食事をしながら当時のお話をすることになっています。
家には何もありませんがこの試写会がめぐみの誕生お祝いになると思っています。
Q :
日本の人がこの映画をどう受け取るものなのか…と監督はとても関心を持っていると思います。今まで受けた取材やきょうの話の中から、特に日本人の受け取り方について気づいたことがあればお話ください。
クリス・シェリダン監督 : 日本の観客の方々と直接対話を持てたのは今日が初めてとなります。海外での上映の際にそちらにいる日本人の方たちとお話する機会はありましたが、こうして日本で直接反応を覗うのは初めてでした。
日本の方は期待以上のリアクションをしていました。これは日本の方だけでなく他の国の方も、ご覧になった方はみなさんが同じ反応でした。
怒り…悲しみ…何かをしたい!横田ご一家のために私たちに何か出来ないのか…そうした反応です。
Q :
映画の中で印象的だったシーンの1つに、横田ご夫妻がかなりきつい口調で会話するところがありました。いつもTVで拝見するのは常に穏やかで、仲ももの凄く良さそうにお見受けするお2人です。ですが、時にあのように会話もされるのだなと新鮮な思いすらしました。
監督お二人の取材の仕方というのは、あのように素の顔も見せた収録も出来る程に信頼があったという事でしょうか?そんな取材の様子とご夫婦の関係もお聞かせください。
横田滋さん : アレはまず編集の段階でカットされるだろうと思いましたし、そうでなくとも日本で映る事も無いな…と高をくくっていました(会場爆笑)
映画には無いのですが、あの場面の直前に電話が掛かって来ていまして、それに早紀江が応対していました。その応対の中で早紀江が、めぐみの拉致された際の状況について既知の物とは違う話をしたので「そんな事を言うとマズイんだよ」と私が言いましても、なかなか納得しないものですから、ついついああいった(喧嘩腰の)かたちになった次第です。
あの1シーンで我々も普通の人間だったというのがみなさんにも分かってまぁ何よりですし、監督の意図もそこにあって使ったのだろうと思います。
横田早紀江さん : あのシーンの事も含め、(映画が出来上がって)日本に来るまで、どんな構成で出来上がったのか知らなかったんです。増元さんがアメリカに行き先にご覧になっていて「エー…あんなの出していいのか?」なんて心配してくれて…私も「何が出てたの?」なんて私のほうも心配になり訊いたりしたんです(笑)
で、実際に見まして…でも、あれはもうしょっちゅうやってる事でして(笑)
普通の人間同士どこの家庭でも例え100点満点の普通の家庭であっても、"絶対に口喧嘩しません…"なんて人はここにも一人もいらっしゃらないと思います。
私たちは考えられないほどの重荷を背負っていて、また言葉1つにも選択して言わなければならないといった緊張感の中で応対をします。決断するその都度大変強い言葉で言わなければならない事もよくありました。
私たちが住んでいましためぐみの居なくなったあの家…あの隣の角家の二階に当時女子学生の方が下宿をしていまして、その女性だけが居なくなったあの時間帯に拉致されたとされるあの角の辺りで、女の人のキャッという声を聞いた…と。それで窓を開けて探してみたけれど、誰も見えなくて誰だったのかなぁ、不気味だなぁ…と下宿の女学生さんが話してくれたわと、下に住むお婆さまが直ぐに私に教えに来てくれたという事が当時あったのです。
私はその事を今もしっかり覚えていて、そんなやり取りもありましたという話を電話でして…そのあとの事が今日の映画に出ていた言い争いのシーンです。
「そんな何もかも自分で見た事のような話で喋るんじゃない!」と夫が後ろから言うので私はビックリしたんです。
それもこれも私たちの普通の庶民の姿で、世間的には"仲良くやっています"とイメージとしてはあるようですが、しょっちゅう喧嘩もしてますし愚痴こぼせば色々の姿がありますので…これからも宜しくお願いいたします…(笑)
司会 : この点を監督にもお伺いしてみましょう。この素顔の横田ご夫妻の姿を編集に入れ込んだのでしょうか?
クリス・シェリダン監督 : 最初に横田さんたちにお会いしたときに、こうしたプライベートの部分も撮影させてくださいとこちらからお願いしていました。
それは、アメリカの人たちにこの物語と問題点に感情移入して貰う為には、理解して貰う為には、登場人物がリアルな人物として伝えられる事が絶対不可欠で唯一の方法だと思っているからです。
記者会見や公の場に居る際の姿だけでは、深い感情の移入は得られません。その姿だけではなくご家族の30年の間戦い続けてきたときの姿をリアルに観客に伝えたいと思ったのです。
その為には普段の私生活をも見て貰わなければ…と始めから分かっていたので、プライベートの撮影もお願いしたのです。
司会 : はい。どうもありがとうございました。(以降フォト・セッションへ)
2006/10/5 都心ホール 司会進行 伊藤さとり 通訳 大倉美子
T,Tomonaga
|