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『運命を分けたザイル』 片山右京トークショー 2005年1月25日、TOKYO FMホールにて、レーシングドライバーで、なおかつ登山家の片山右京さんがトークショーを開催
! ! アワード 2004年 イギリス・アカデミー賞最優秀イギリス映画賞受賞 文部科学省選定(少年向、青年向、成人向、家庭向)/厚生労働省社会保障審 議会推薦/東京都知事推奨 トークショー 司会 : それでは皆さん盛大な拍手でお迎えください。 片山右京さんです! 司会 : ではご挨拶お願いします。 片山 : (笑いながら) レーシングドライバーの片山右京です。 司会 : 失礼いたしました、私ご紹介を間違えちゃいました? 私いま… 片山 : いや、職業は何ですか?と本当に良く訊かれるんですが、僕はいま現時点でちゃんとした職業はやっぱりレーシングドライバーで。ただレースは二十歳からなんですね、それで、色んな人のおかげでF1まで行かせてもらったんですけれども。 最近ちょっと知っていただいていることも多いんですけれども、実は僕は6歳から父の影響で山をやっていて、丹沢で「おっか」と言って山小屋に荷物を運ぶことをやらされたり、「沢登り」といって滝を登るんですけれど、そういうところにお客さん連れて行ってザイル(ロープ)を張ってあげる…そういうことを小さい頃から父にさせられて、で、子供の頃はどちらかというとそういう遠征隊に入ってヒマラヤなんかに行きたいなぁ…なんて思っていたんですね。 司会 : お父様がお医者さまでいらっしゃって、その父の影響で…と聞くとなんかラグジュアリーな感じがしますけど、今も聞いている限りではなんというか、お小遣いを自分で稼ぎつつ山に登っていたという感じですが。 片山 : いや、全然そんなことはなくて本当を言うと山はあんまり好きじゃなくてですね、体が弱くて連れて行かれて。ただ木登りとかは好きだったので「人工登攀(じんこうとうはん)」といって、道具をいっぱい使う登山なんですよね。 今はヒマラヤに毎年行っていて、パリ・ダカール・ラリーに行く前はマナスル(最終キャンプに雪崩で断念)にも行ってるんですけど、どっちかというと僕はバリエーションでは「壁屋さん」と言うと分かり難いかもしれませんが壁を登るのを専門的にやってるんです。 司会 : 小さい時から自然に山に接していたということなんだと思うんですけど、いつ頃から? だって、想像を絶する苦難だと思うんです、ヒマラヤを登ろうと試してみたり…それをなぜ敢えてやろうとしたのですか? やはり好きなんですか、山に登ったりするのが。 片山 : ん〜そうですね、ま、嫌いじゃないっていうのもあるんですけど、F1を引退してもやっぱり幾つになっても挑戦が必要だっていう部分と、それからF1ではですね例えばアイルトン・セナっていう10年前に亡くなった天才ドライバーが言ったんですけど、「神様を見た」とワールド・チャンピオンを獲ったときに言って… 司会 : 神様を見るっていうのはどういうことなんでしょう… 片山 : セナは鈴鹿サーキットのスプーンコーナーを立ち上がったときに雲の合間から光が差して、その時セナはスタートで出遅れていたんですけど自分を追い上げるための力を神様がくれた…と言っていたんです。でも僕はそんな神様をレースで見たことがなくて、悪魔ばっかり見ていて、ま〜た失敗したよとか思っていて…(笑) 司会 :
はい。
この「運命を分けたザイル」の主人公のジョーとサイモンも、大学卒業と同時くらいに登頂するんですね、アンデス山脈のシグラ・グランでですか。 片山 : 凄い奢った言い方になるんですけど、じゃ、なぜ山をやるのかっていうと、さっき言った洒落の部分を差し引いても、世界で一番高い場所までもうちょっとと振り返ったら自分よりも高いところがあと少ししかなくて、そこから見える景色を見たときに地球が自転を止めてチベットの高原の上にポッカリと雲が浮いている世界とかが見えたり、昼間なのに宇宙が本当に、空色が宇宙の濃紺なんですよね。 司会 : 今、地球の自転が止まったという表現をされましたけど、どういう感じなんですか。 片山 : 普通の日常生活で、例えば朝起きて電車に乗って会社に行かなければいけないとか、そうした日常の時間の流れもあるし、自分のそのときの精神的なものや立っている場所によって時間てスピードが変わるじゃないですか。 極端な話でいうと去年僕は電気自動車で時速400km/hに挑戦!ってやってみたんですけど、375km/h位まではたった20数秒で行っちゃうんですよね、で、空気抵抗のサーチュレートといって400km/hに行くまでに20秒位掛かって。 人生で40秒50秒って言ったらカップヌードルも作れないし凄い短い時間じゃないですか、一日のうちでも40秒って。でもそれを(計測コースの)バンクの中で歯を食いしばってる40秒であったりパリダカの砂丘を越えて、もう17時間走ってるなぁ…クルマ降りたのがたった3分間タイアのエアを抜くときだけで…その時にこんなに苦しくて暑い時間というのが永遠に続いちゃうんじゃないかなっていうふうに思うときもあれば、かと思うとその忙しさの中で追われていて、あぁ仕事しなきゃと思ってたのが全部抜けちゃうような本当に地球が自転を止めて風の音とか空気の音も止まるような瞬間があったり、8700mとか8800m弱の所までしか僕はまだ行ったことがないですけれども… 司会 : 今の話を聞いているだけで、なんとなく東京っていう街に生きてるといろんなものに守られていて、でもこの間スマトラ島沖地震で津波もあったときに、あぁ、地球に生きているんだなぁ、そういえばって思ったんですね。だから地球に生きてるんだなって思うことが凄く感じられるんでしょうね、こういう極限状態に行くと。 片山 : まぁ、本当にそうした局面に遭わないと自分たちの冒しているリスクとか自分たちの立っている場所の脆さも本当には分からないと思うんですね。だだ、この映画は実際に起こったことだという大前提で、これから皆さんご覧になるでしょうけれどこれが山の世界の事で自分には関係ないことかっていうと、僕はそうは思わなくてその局面になったときに山だからということではないと思うんです。 司会 : 映画を見ていて専門的なんです…ザイルの結び目がどれだけの重さに耐えられるとか、長さでどこまで友達を降ろせるとか計算したりとか、あぁ、凄い数学的なんだなぁと思って、でも、タスク、解決しなければならない問題って、例えば企画会議とか受験とかそういうことにも適応できることがいっぱいあるなと思いますね。 片山 : ただ、本当の現実で自分か放り込まれたときに頭で想像するのとは違いやっぱり死にたくないっていう恐怖心とか、自分の相手や友情、家族であったり、もしかしたらそれは子供であったり…相手が誰が分からないけれどどこまで自分が優しくなれるか強くなれるかというのは、やっぱり練習や勉強じゃできないものなんですよね。そこまで自分が積み重ねてきた哲学とか生き方とか、多分そうやって積み重ねてきたもあると思うので、映画を見てそれから勉強してっていうだけじゃない部分もあると思うんです。 司会 : 生きてるとか死ぬとかそういう部分を超えている所が、この「運命を分けたザイル」には出ていると思いました。それと私たちの日常生活にも分かるようなところもあり、こんな極限状態でこんなちっちゃなことを気にしている…とか、その一方で私たちの知らない別世界で勝負している人も凄いなぁ…と。 片山 : 何度も言うように、これは本当に起こった話ですから観た上で自分に置き換えてもらって二つの場面で自分がどっちの判断をするか、自分なら生き残れるか、考えてもらえたらなぁ…と思います。 司会 : 重い映画ですけど、ただ映像的に言いますとロビーにも片山右京さんの写真も飾ってありますけれど非常に綺麗なんですよね。だから、こんな美しい空、美しい氷河の色とかを観ることが出来るのかなぁと。そういう意味でも感動しました。 片山 : 今までの山岳映画とか山を題材にした映画では、本当に漫画みたいな現実離れして首をかしげる演出が有り過ぎたので、そういう部分においても全てにおいて本当に同時に登りながら撮っているというのが、この映画の映像の本物さを出していますよね。 司会 :
本物っていう意味で思ったのが、荷物が凄い少ないのがびっくりしました。 片山 : 例えばヒマラヤなんかだと全部がパウダーみたいに粉雪に近いので、おにぎりみたいに握ろうと思ってもおにぎりにならないですし。 司会 : それって砂時計の中に閉じ込められたような感じですよね? 片山 : 全くそういう感じで、この砂時計が一杯になるまでに朝を迎えられるのななぁ…と思ったのと、移動も出来ないし外は寒いし、テントの中で燃料を焚いていてもマイナス27度くらいだったので、外に出た体感温度だったらマイナス60度位にはなります。高速道路で200km/h以上のスピードで走っているような風が吹いてますから。 司会 : そんな極限状態から生還されたんですね。 片山 : でも、それはまだたいしたことなくて(笑) 司会 : 結構そんな気楽に…あぁ、大体300m位かなみたいな感じなんですか? 片山 : やっぱ馬鹿は一回死ななきゃ分かんないって言われるんですけど、生きているうちは何度でも行けるんです(笑) 司会 : 生きているうちは何度でも行ける…では、今後の登頂予定などについてお話いただけますか。 片山 : 本当は今回パリ・ダカールから帰ったらまたエベレストに春直ぐ良い時期に行く予定だったのですけど、パリダカで(本人が思っていた以上の?)3位になっちゃったんで、逆に仕事として砂漠で走ることになってスケジュールがずれちゃいまして… 司会 :
はい、分かりました。では、レース、レーシングドライバーとしても世界でこれから1番にも期待したいですし、登山家としても是非どんどん登っていってください。 片山 : はい、では皆さん非常に疲れる映画ですけれども(会場笑)深呼吸しながらね、頑張って観て下さい。ありがとうございました。
【囲み取材】 インタビュアー : まず、映画をご覧になられた感想をお聞かせください。 片山 : いや〜クタクタになりましたね。
単純に山好きとして観ていて、今までのバラエティーっぽい山岳映画と違って本当にドキュメンタリー・タッチで実話でもあると言うこと。 インタビュアー : 片山さん自身が登山をされていると言う事もありますから、いまお話にあったように実際にこの映画の二人の立場になったら非常に身につまされると言う部分もあったのでは? 片山 : そうですね、振り返ったときに自分だったらどうするんだろうと思うと、僕のフィロソフィーとして絶対に見捨てずに何とか助け出す方法を考えるだろうと思ったんですけど。 インタビュアー : 片山さん自身の登山の状況を伺いますが、マナスルの登頂に挑まれたり、いわゆる8000m級を越える山が14座あって、トークショーの中でもいずれは登頂に挑戦して成功したいとおっしゃっています。 片山 : 元々が山で育った環境があってそっちを目指していて、レースのほうが後なんで、登山の素地はあったんです。いまのモチベーション(動機)と言うのは登れるか登れないかと言う結果は分からないけれど、とにかくまた原点に戻ってクライミングと言う中で自分にF1で与えられちゃったシューマッハとかに対するコンプレックス等を無くすように、今度は世界で1番になるんだとか…なんて小さい事に拘ってるなぁとか思いますけど(笑)、そう言うことと同じように挑戦をしてゆくってのが、自分にないと生きてゆけない人間なので。 インタビュアー : 登山はご家族の理解と支えと言うのが有ってこそと思うんですけど、ご家族の方は何かおっしゃていますか? 片山 : ホント最初の頃は、「私はレーシング・ドライバーと結婚はしたけど登山家とは結婚してないわ」とウチのかみさんにね…そりゃ名言だね(笑)なんて言ってましたけど、でももう最近はね、"挑戦家"片山右京と言う事でしょうがないなと呆れられていて、慣れてはきてます。 インタビュアー : 最後にこれからご覧になる方々にメッセージをお願いします。 片山 : 衝撃的な本物の山の映像シーンやその美しさと同時に、これは実は山でだけの問題ではなくて友情とかとザイルで繋がっている部分をどうやって自分が生きる上で判断を下して行くだろうか…と。 インタビュアー : はい。ありがとうございました。 2005/1/25 TOKYO FMホールにて text & photo : HUIT
『運命を分けたザイル』 |
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↑「運命を分けたザイル」
監督:ケヴィン・マクドナルド 原作:ジョー・シンプソン 出演:ブレンダン・マッキー,ニコラス・アーロン,オリー・ライアル,ジョー・シンプソン,サイモン・イェーツ,リチャード・ホーキング
↑片山右京
↑試写会前に行われたマスコミ向けのフォトセッション
↑司会 :TokyoFMでラジオパートナーなどを務めている七尾藍佳
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